啓蒙・啓発運動の展開
長野市に「善光寺の世界遺産登録をすすめる会」が設立されてから4年目になります。
運動を推進する事務局は社団法人長野青年会議所が担当しており、エネルギッシュなスタッフに恵まれあらゆる機会とメディアをフルに活用して啓発運動に汗を流しておられます。
また、この間専門家により構成されている専門委員会も献身的に数多く開催され、コンセプトと具体的な進め方について地道な研究・検討がされてきています。
しかし、外から見ると進んでいないという印象はぬぐい去りません。
世界遺産登録への核心的問題点
去る7月7日、熊野古道が世界遺産に登録されました。喜び、驚きとともに熊野古道がどうして世界遺産にという声も聞かれました。しかし、人・自然・信仰・文化・政治・権力などの複合的文化遺産が推薦されていたことはわが国の世界遺産に対する新しい視点であり、私たちが、いますすめている「善光寺を世界遺産への運動」と考え方・視点が同一軸上であり勇気と希望を与えてくれました。
わが国の世界遺産への登録件数は12であります。これらの文化遺産をみますと共通したキーワードがあります。
まず「古都京都の文化財」をみますと清水寺・西本願寺・延暦寺などの13寺、下鴨神社など3社、二条城の17件の文化財が含まれています。そしてこれらの個々の文化財は皆、国宝や国の重要文化財(以下重文と呼びます。)に指定されています。
「古都奈良の文化財」も同様です。東大寺・唐招堤寺・薬師寺など5寺、春日大社・春日山原始林・平城京跡など8つの文化財から構成されていますが、国宝・重文・国立自然公園に指定されています。
今回登録された熊野古道も国宝4件、重文23件、国の史跡・名勝・天然記念物14件で、すべて国の指定を受けている文化財です。
異質なものとして「白川郷と五箇山の合掌造集落」があります。ここには国宝や重文に指定されている文化財は1件もありません。しかし、国の「重要伝統的建造物群保存地区(以下省略して重伝建と呼びます。)」の選定を受けています。
以上の事例でもおわかりのように、世界遺産に登録されるには大前提要件として国が指定(または選定)する文化財として、国宝・重文・史跡・名勝・天然記念物・自然公園に指定されているか、または重伝建に選定されているか何らかの要件を満たしていることです。
この理由は、世界遺産に登録された文化財の保護・保存・整備等が世界遺産条例により国の責務とされているからです。つまり、文化財の保護・保存・整備に要する費用について、国の補助制度で裏打ちされていることが必要だからです。
善光寺のケースを検証しましょう。
いま、善光寺の世界遺産の登録運動で対象となる建造物群や文化的景観の地域をどうするかは専門委員会で研究・検討されています。その一つの考えとして、NEWS LETTER Vol.2で宮本忠長先生が(宮本忠長、若林時郎、鈴木博之各先生の提言による構想)詳細に構想を説明されていますので参考にしていただきたいと存じます。いまのところ、試案として善光寺・院坊・仲見世および周辺の景観ゾーンと考えられています。
善光寺の建造物群で、国宝に指定されているものは本堂であり、重文に指定されているものは山門と経蔵の2つです。本堂の屋根の葺き替えも、現在行われている山門の修復工事も国費支援が主体となり、県・市の財政支援が加わり実施されています。
しかし、その他の建造物群・宿坊・仲見世には、文化財保護法による保護の制度はありません。
では地区内の建造物を国宝・重文・史跡等に指定してもらってはという考えもありましょうが、超困難でありましょう。したがって現状の位置づけのままでは、善光寺の世界遺産登録への道はありません。 |
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