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善光寺町の文化的景観
 以上から善光寺文化の独自性の一つは寺と町との密接な関係性にあり、世界文化遺産の登録基準に従ってそれに名称を与えれば、「善光寺町の文化的景観」といえるのではないかと思う。文化的景観 cultural landscape とは1990年代から使われ始めた新しい基準で、それまでの西欧型の石造遺跡や建造物に重点が置かれすぎたという反省から、もっとアジア型の生きている伝統文化を取り上げようとするものであり、現に活動し生活されている善光寺文化を言うのに相応しい。しかしこの基準の意味は、人間と自然の間の有形・無形の交流から生れる独特の優れた景観、例えば巡礼の道や棚田のようなものを指しており、善光寺周辺の景観の現状では基準のクリヤーは難しい。特に大門町・宿坊・仲見世及びそれらの周辺の町並み景観や境内周辺の自然的景観の再整備と修景美化が必要であろう。

長野のまちづくりと善光寺世界遺産
 善光寺の世界遺産登録をすすめる運動で一番重要なことは、それを何のために、誰のためにやるのかという、運動の基本理念を明確にしておくことである。ユネスコ精神の世界平和の実現というのは、国際的又は究極的な目標であり、私達の運動がそこに繋がっていることの認識は大切であるが、運動の直接的な目的にはならない。私はこれを、善光寺を中心とした佛都長野の固有の歴史、文化、景観を正しく美しく後世に伝え残すために行う、私達自身のためのまちづくりにあると考える。
 現状では善光寺周辺の環境や景観には乱雑さが目立ち、特に本堂の北と西にある駐車場は問題である。駐車場はできれば中心市街地の地下(中央通り、国道406、昭和通り等の地下)が望ましく、それによって南からの参詣ルートを確立すると共に、中心市街地を車の見えない文化と自然に満ちた町にしたい。
 私は善光寺周辺が今のような状態のままで世界遺産に登録されたとして、どれだけの価値があるか極めて疑問に思う。それが出来たとして、それはあり得ないことだが、世界的にもっと有名になり今以上に観光客が集まり境内は賑わうだろうが、駐車場が足らなくなり、土産物屋が増え、境内の松林は枯れていくだろう。しかし境内とその近くでは、駐車場や店舗の増設はユネスコから禁止されるため、更に遠い場所に設置せざるを得ず、利用者の不満と市街地の混乱を招くだろう。また、伝建地区の指定も、自分達のまちづくりのためという確たる自信と主体性がない限り、それによる生活上の制約や負担から、長い間には不満が高まるだろう。
 善光寺を世界遺産への運動を、ただ世界遺産リストへの登録だけを目標とせず、それに向けた私達の活動の意味を充分に考え議論し、住民・市民の意見を求め尊重し、よく説明し、その合意と熱意のもとに、この運動を幅広く粘り強くすすめたいものである。
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